作品目録
簡素な透明性に満ち、エネルギッシュで崇高な内容を持つ西澤の作品は、
まず第一に人間であることに感動する側に立って語り掛ける音楽を味わうという喜びを、
われわれに取り戻してくれる。
〜メキシコ・シナロワ新聞2001年10月27日
習作を除く、今までに作曲した作品の一覧です。
タイトルのリンクをクリックすると作品の詳細がご覧頂けます。
曲の冒頭のみ楽譜もTiff画像にて掲載しておりますのでダウンロードしてご覧下さい。
また、いくつかの作品は
「友の会」ページ
にてMP3を公開しておりますので、ぜひこの機会にご入会ください(入会は無料で、サイト上で行えます)。
1999年
委嘱:原島峰子(Vn) 初演:1999.9立川・原島峰子(Vn)佐藤美歌(Pno)
備考:第4回東京国際室内楽作曲コンクール第一位受賞作品
良き友人であり若手最新鋭の作曲家、西澤健一氏に今年(1999年)3月演奏会用として委嘱。
10分という短い中に彼特有のヴァイオレンスとロマンティシズムが凝縮した美しい作品
となっている。破壊性を伴う官能的な世界観は、聴く者すべての感情に忍び入り、訴えか
ける。技法に固執せず、かといって聴衆に迎合することの無い自由な精神が、この作品の
魅力となっている(記・原島峰子1999年10月初演時)
タイトルは某直木賞作家の作品からの無断借用。当時はまだしばしば読んでいたが
最近は全く読まない。これは初期で最も重要な作品のひとつだろう。(2006/02)
[楽譜サンプル]
委嘱:馬渕昌子(Va) 初演:2002.10国立・原島峰子(Va)西澤健一(Pno)
私の中で、この作品は「馬渕氏の演奏するショスタコーヴィチのソナタ」と深く結びついている。
なぜなら、まさしくその響きが耳の中に残っている最中に書き留めた作品なのだから。だからこそ
馬渕氏ご本人が、ショスタコーヴィチのソナタとともにこの作品を取り上げてくださることが非
常に嬉しい。今より数えて8年も前の若書きゆえか、私は素直すぎるほどの情緒性を隠さず吐露し
ている。技法の未熟さが散見されることをどうかお許し願いたいのだが、もしこのコンサートにお
いて、ショスタコーヴィチへの良き前奏曲としてこの作品が響いてくれるのであれば、私にとって
これ以上の贅沢はない。…ちなみに、タイトルは有名な某日本人作家の作品に付された副題をもじ
ったもので、音楽的な意味は特に無いが、おそらく、この作品を書いているうちに、そのような気
分にもなったのだろう。(2007/01 馬渕昌子リサイタルに寄せて)
[楽譜サンプル]
委嘱:国立音楽大学ユーフォニアム研
初演:1999.10国分寺・新倉範子、小池美穂、上村麻子、大野義政(Euph)西澤健一(指揮)
非音律的な行為、同音の持続およびクラスター、旋律的要素の3つの要素が面影を残しつつ他方の
要素へと漸進的に推移し、交換の間隔を徐々に狭くしていくことによって音楽を構成している。
公表している作品のなかでは、誰の目にも明らかに自分の師弟関係が鮮明となっている作品かもしれない。
国立音大ユーフォ研より委嘱を受け作曲。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Teneramente dolce Cantabile/Allegro Vivace
第2楽章:Presto quasi vento. attacca:
第3楽章:Adagio molto
委嘱:丸山泰雄(Vc) 初演:2001.6ブリュッセル・Robin Dupuy(Vc)西澤健一(Pno)
(前略)その後、彼から「ベートーヴェンの4番からインスピレーションを受けて、
チェロソナタを作曲している」と聞いた。5曲のソナタのうち、ベートーヴェンが
ついに「自由なソナタ」という道を見出し、アヴァンギャルドな世界に踏み込んで
いった第4番。そこに西澤は現代の作曲家としてのアヴァンギャルドを求める姿勢
とベートーヴェンと接点を見出したのだな…、とすぐに思った。(中略)第1楽章
はベートーヴェンのモチーフが色濃く出た「第4番のオマージュ」。第2楽章は第
3楽章への胎動ともいえる第4番の地獄のエネルギーに支配される。そして間髪を
入れず、彼の世界の真骨頂ともいえる響きの終楽章に入ってゆき、果てに曲の冒頭
のモチーフに戻り、沈黙の中に消えてゆく。(記・小澤洋介2004年5月リサイタル)
やはり福井のコンクールで知り合ったチェリスト、丸山泰雄氏より委嘱を受
け作曲。これは恐らく自分の作品のうちで最もロマンティックな作品だろう。曲はベ
ートーヴェンの第4番を軸に自作を含め様々な引用を施し、精神をより一層に表明化
している。(2006/02)
[楽譜サンプル]
2000年
委嘱:石原信輔(Mar)
初演:2000.ベルギー Joris Van Den Hauwe(Ob)、石原信輔(Mar)、高橋康子(Pno)
ベルギーに渡ったマリンバの石原氏より電話があり、彼が組んだアンサンブルのための
作品として委嘱を受けた。オーボエがゲストであったということで、オーボエのための
技巧的なカデンツァを投入し、久々の再会を祝して彼のために書いた最初の作品を所々
に引用した。3つの連続した部分からなる。音楽的な立場は現在のものへと徐々に、し
かし順調に推移していた時期である。(2006/02)
[楽譜サンプル]
委嘱:石原信輔(Mar)、高橋康子(Pno) 初演:2000.ベルギー・委嘱者
やはり石原氏より委嘱を受け作曲。タイトルはあらかじめ「青空」だと決められていた。
これはおよそ青空に縁の無い生活をしている私には全く手に余った。そもそも小さい頃か
ら日陰のほうが好きだったのだ。まぶしすぎる夏の空なんかは溶けてなくなりそうだから
御免だ。首都近郊とはいえ僕の育った場所には河原以外の何もなかった。あの馬鹿みたい
に鳴く蝉の声を思い出すと絶望的な気分になる。しかしどういうわけか、大人になってか
らは太陽を直視するようなことをしたがる自分もいる。…僕は子供のころのほうが賢明で
あったらしい。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Overture
第2楽章:Concertino 1 (for Piano). attacca:
第3楽章:Rondo
第4楽章:Concertino 2 (for Violin)
第5楽章:Interlude. attacca:
第6楽章:Concertino 3 (for Marimba). attacca:
第7楽章:Conclusion
委嘱:石原信輔(Mar)
初演:2000.7東京・岡田鉄平(Vn)、石原信輔(Mar)、今井正(Pno)
石原氏よりの委嘱が3作品続く。過去から影響を受けるとは一体どういうことなのか。
この時期には答えを見つけつつあった。室内ソナタの形式を応用した7つの楽章からなり、偶数番号
の楽章には、この作品が演奏される公演の意図を反映して、各楽器のための小協奏曲が割り振られ
ている。第2〜3楽章、第5〜7楽章は続けて演奏される。
マリンバが静かに主題を提示する第1楽章「序曲」、ヴァイオリンがピチカートで別の主題を提示する
第2楽章はピアノのための小協奏曲で、カデンツァもある。第3楽章「ロンド」は「Stone screen III」の破壊
的引用。第4楽章のスケルツォはヴァイオリンのための小協奏曲。非常に技巧的で、五月蝿い。冒頭が
簡略に再現される第5楽章「間奏曲」はすぐにマリンバのための小協奏曲である第6楽章に移行しクライ
マックスを形成する。響きはチェロソナタの終楽章に近いが、しかしロマンティックな精神は既にない。最後
に第4楽章のコーダに由来する要素がピアノによって静かに演奏される第7楽章「終結」によって締めくくられる。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Choral : Religiös und antiquiert. Sehr langsam. attacca:
第2楽章:Stürmisch und heftig. Rasch. attacca:
第3楽章:Menuett : Rätselhaft. Mäßig. attacca:
第4楽章:Fließend und trotzig. Sehr rasch
委嘱:サンクト・フローリアン三重奏団(三戸素子(Vn)小澤洋介(Vc)Phillip Young(Pno))
初演:2001.4東京・委嘱者
前略)グレゴリオ聖歌のようにヴァイオリンとチェロの朗唱でテーマが展開する第1楽章。
ゆっくりと現代に近くなり、また中世へと戻っていく。あたかもこの曲の全体図と言える。
第2楽章で初めてピアノが登場し、疾風のごとく曲を翻弄する。第1楽章で現れたテーマは秩
序の中から一転して混沌性を帯びる。そしてピアノ三重奏曲史上頂点に立つベートーヴェンの
「大公」三重奏曲の一番不可思議で異常な部分が、この曲の狂言回しのように出てきた先は、
第三楽章のメヌエットである。この楽章はシューベルトのイメージで書いたという。第一楽章
と対になったのがこの第3楽章。第4楽章は第2楽章と対になっており、またピアノが動き
始める。この楽章ではモーツァルトのアクロバットのような転調をテーマに繰り広げられ、も
う一度登場する狂言回し「大公」のモティーフから、後半の大きなコーダへと発展する。もっ
とも現代日本を象徴する断片が挿入され、全ての楽想が掻き回され、誇大妄想でゆがんだコラ
ールに至る。この音楽史の最後は、現代っ子の不敬で不敵な「アーメン」で締めくくられる(後略)
(記・三戸素子2001年4月初演時)
思想の転機となった節目の作品。(2006/02)
[楽譜サンプル]