作品目録
簡素な透明性に満ち、エネルギッシュで崇高な内容を持つ西澤の作品は、
まず第一に人間であることに感動する側に立って語り掛ける音楽を味わうという喜びを、
われわれに取り戻してくれる。
〜メキシコ・シナロワ新聞2001年10月27日
習作を除く、今までに作曲した作品の一覧です。
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曲の冒頭のみ楽譜もTiff画像にて掲載しておりますのでダウンロードしてご覧下さい。
また、いくつかの作品は
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にてMP3を公開しておりますので、ぜひこの機会にご入会ください(入会は無料で、サイト上で行えます)。
2001年
委嘱:金庸太(Guit)、高橋康子(Pno)
初演:2001.4東京・委嘱者
金庸太氏より委嘱を受け作曲。これ以降、ギター作品を頻繁に書くようになるが、恐らく最
初に書いたこの作品が、もっとも難しい編成だったと思う。ここで私はあまり音楽史の問題
には首を突っ込まなかった。とにかく、ピアニストとのアンサンブルを望むギタリストにと
って有用な作品となるよう努めた。この作品はギターの即興的な表情のアルペジオから開始
する第一のゆったりした部分。そして舞曲的な第二の部分からなる。最後はすべてがアルペ
ジオで溢れ、唐突にそれが終わるとすぐさま尻切れのように音楽もお開きとなる。(2006/02)
[楽譜サンプル]
献呈:橋本晋哉
初演:2001.5ブリュッセル・橋本晋哉(Tuba)西澤健一(Pno)
この時期、ベルギーにおいて初めての個展を開催した。その際のアンコールピースとして用
意したのがこの作品だ。旅行鞄に荷物を詰めながら2日ほどで一気呵成に書き上げた。当日
にしか会えないテューバの橋本氏には、強引に両方のパートを弾いた録音をネットで送るなど
して、文明の利器には随分と助けられたが、ベルギーから送った楽譜はフランスの郵便局がサ
ボタージュをしていて届かなかった。橋本氏のニックネームから曲中の素材を取ったり、ある
いはタイトルを考えたりするなど、少しは気も利くようになった。HとGのトレモロは、つまり
そういう意味で、この名の付いた邦題「男やもめ」という小説が存在するのを知ったのは、こ
れより後の話である。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Andante espressivo
第2楽章:Allegro vivace
委嘱:亀井貴幸(Guit)、阿部栄梨沙(Vc) 初演:2001.8川越・委嘱者
ベルギーでの個展は成功裏に終わった。多少はフランスにも足を伸ばし、まったく無計画
な旅で迷惑をかけ続け、そこで再会したり、あるいは新たに出会った人々から私は新しい
刺激を受けたり、あるいは仕事を引き受けたりなどした。この作品の委嘱者である亀井氏
も当時はパリに住んでいて、無理をお願いして一週間ほど泊めさせて頂いたのだった。
作品は、ギターが歌う歌から徐々に音楽が生成される第1楽章に、大規模な舞曲的ソナタ
である第2楽章からなっている。(2006/02)
[楽譜サンプル]
委嘱:クライネス・コンツェルトハウス(山根公男(Cl)藤田乙比古(Hn)
三戸素子、山田耕司(Vn) 二宮隆行(Va) 小澤 洋介(Vc) Rafael Guerra(Pno))
初演:2001.10シナロワ(メキシコ)・委嘱者
メキシコ・シナロワ音楽祭2001秋の演奏会のために、クライネス・コンツェルトハウスが委嘱
した作品。(中略)3楽章から成り、第1楽章は彼方より聞こえてくる静かな前奏曲とも言え
る楽章で、二つのテーマが整然と提示される。第2楽章はスケルツォで、管とピアノのみで演
奏される躍動感に満ちた協奏的な第1部の後、トリオ部分はメキシコのメロディーが弦楽四重
奏のみで間奏曲のように演奏され、最後にスケルツォを全員で大規模に発展させていく。(中略
)うって変わって第3楽章は静かに第1楽章のテーマが始まる。これがフーガのテーマで、次々
と楽器が登場する。そこへ第2主題のテーマが入り込んできて二重フーガとなり増大し、突き抜
けた後はまた清浄な世界へ戻ってきて彼方へと消えてゆく。この曲はメキシコで絶賛され、大成
功をおさめた。(記・三戸素子2002/07日本初演時プログラム)
メキシコの聴衆の中には、この作品の混沌的なある部分と9.11とを結びつけて考えた
者もあったようだ。が、これは8月の作品なので当然ビルは崩れていない。私は、なんだか悪
いことをしたような気分でいる。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Andante meditativo
第2楽章:Allegro ritmico
第3楽章:Adagio amoroso
委嘱:清水容子(Sax) 初演:2001.11小平・委嘱者 石橋衣里(Pno)
やはりフランスでお世話になったサクソフォニスト清水容子氏のリサイタルのために作曲。
3つの楽章からなり、第1楽章はピアノが単音で提示する主題が自由な対位法を生成する
清浄感のある音楽、第2楽章は戯れに南国風フランクなどと名付けて見ても良いかもしれ
ない。第3楽章は一転して感傷的な陶酔の世界へとひた走っていく。思わせぶりにアマー
ビレなどと指示をつけるところが、性格の悪いところかもしれない。
編成の大きい前作の経験を経て、いよいよ私は自分の創作姿勢をより簡明で直截なも
のへと意図的に変化させようとした。虚飾と言える虚飾を全て剥ぎ取った先に何が見える
のか、確かめずにはいられなかったのである。(2006/02)
[楽譜サンプル]
委嘱:波多江史朗(Sax)石原信輔(Mar) 初演:2001.12 東京・委嘱者
石原氏のリサイタルのために作曲。この時期の自分の創作姿勢を端的に象徴したタイトルで
あるセンプリーチェ(シンプル)の名のとおり、この音楽では、構造も和声も旋律も精神も
何もかもシンプルにしてしまおうと画策していた。結果出てきた音楽は、まったく個人的な
独白であったわけである。マリンバのリサイタルなのにサックスのほうが目立つ曲、という
のも、まあ、楽器のキャラクターだからと言ってしまえばそれまでだけども…。(2006/02)
[楽譜サンプル]
委嘱:Trio SoVoS(Matthieu Samani(Sax)Robin Dupuy(Vc)Cyril Dupuy(Cym)
サクソフォン、チェロ、ツィンバロンの三人で活動するアンサンブルのために作曲。こ
の作品に関しては、あまり良い思い出はない。簡明であろうと歩き始めた道が、自身の
自制心の無さから、ただ無心に郷愁を貪る道へと踏み外していたことを、作曲当時はま
だ気が付いていなかったからである。まったくの不出来であるとは言わないが、特別に
上質であるとは到底言えないと今の私はこの作品を評価している。…しかもフランス人の
好みでは絶対ないだろう。悪いことをしたと思う。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Espansivo. attacca:
第2楽章:Abbandono
第3楽章:Burlesco. attacca:
第4楽章:Serioso
委嘱:大萩康司(Guit) 初演:2002.11つくば・委嘱者
出版:2004.11(株)ホマドリーム ISBN4-902699-32-X
第一楽章が始まると、まるで何かの宗教儀式のように聴衆は五分間たった一つ
の旋律線を聴き続ける。全ての音に運指と弦が指定されており、演奏者も聴衆
も極度の緊張と静寂の中で身動き一つ取れない。沈黙が臨界に達すると同時に
曲は第二楽章に移行し初めて和音の恩恵に浴する。視界が急激に開けるこの瞬
間は作品中最も幸福な部分だろう。第三楽章では一転してトリッキーなスケル
ツォである。休みなく第四楽章に移行すると作品冒頭の単音がハーモニクスで
回想される。推進力を持ったフレーズが重なりあい、敬虔で、ある種の痛みを
伴ったクライマックスを築くとゆっくりと落ち着き、精神的充足感のもと静か
に音楽を閉じる。(2002/12 西澤健一作品展プログラム)
簡明であるには相当に意識的でなければならないのだと反省した上で
この仕事に当たった。やはりこの第1楽章は、自分にとっての一つの極点であ
ると今でも思っている。(2006/02)
[楽譜サンプル]
2002年
第1楽章:Andante pastorale
第2楽章:Andantino
委嘱:小山悦子(Ob)関谷智洋(Hn)佐藤美歌(Pno) 初演:2002.2 東京・委嘱者
ギターソナタというひとつの極点を過ぎ、この頃から、古くからあり確立されている形式へ
と、より目が向かうようになった。第1楽章は平和で静かな響きのなかに不安の影を潜ま
せる第1主題と、リズムが特徴的な第2主題から構成されている。この作品で私は初めて
ソナタの提示部に「繰り返し」を付した。今の時代に、手錠を取り牢獄から出て自由を満喫
する喜びを生々しく体験するには、自ら手錠を嵌めて牢獄に入り不自由になるよりほかない
と確信したからである。第2楽章はシューベルトの顰に倣い緩徐楽章で締めくくる。曲の最
後には、この作品を作曲する直前に亡くなった溝上日出夫氏への追悼として、氏のピアノソ
ナタからの引用がある。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Andante meditativo
第2楽章:Allegro con leggerezza
第3楽章:Andantino con nostalgia
第4楽章:Allegretto semplice
献呈:今井正、井口真由子(Pno) 初演:2003.10 西宮・野田憲太郎(Pno)
第二、第三ソナタは2002年に続けざまに作曲された双子の関係にある。ベルギー在住
のピアニスト、高橋康子氏より10分程度の独奏作品の委嘱があり、ひとつ(現在、第
二ソナタの第一楽章となっている)曲を書いてみたものの、音楽の命じるところ、
どうしても楽想を膨らませざるを得なくなり、どうしても楽章を増やさざるを得なく
なり、結局は40分にも及ぶ作品に出来上がってしまった。それが第二ソナタである。
当然のことながら、これは依頼主の趣旨に副う仕事ではなかったので、私はもう一度
最初から別の作品を書き上げなければならなかった。そうして出来上がった作品が第
三ソナタとなっているのである。
ところで私は一つの作品の作曲中に何かしらの思想の変化があっても、それを
作品中では隠さないようにしているが、第二ソナタではその瞬間を明らかに確認する
ことが出来る。例えば静寂さと流麗さに支配された最初の二つの楽章を、第三楽章の
巨大なオクターヴの連続が粉々に打ち崩す瞬間。最後に打って変わって舞曲的なフー
ガ現れる瞬間。この作品では、様式に対する趣味までもが変化して様々な音楽の「価
値」が自己を主張し決闘するが、しかし実のところ、各楽章は冒頭に示される素材
によって細部から調性に至るまで決定され、統一されているのである。まるで最初
から対立など何も無かったかのように。まったく平穏無事に響く第四楽章の終結にお
いて、解決が成就されるのを象徴的に聴くことが出来るだろう。(2005/09西澤健一ピ
アノ作品展プログラム)
[楽譜サンプル]
委嘱:高橋康子(Pno) 初演:2003.10 西宮・野田憲太郎(Pno)
(ピアノソナタ第二番の解説より続く)
第三ソナタは単一楽章の短い作品ではあるが、このような第二ソナタで
の経験が全て投入されている。しかしこの作品が第二ソナタの縮小版である
とは言い切れない理由は、素材間の対立は、より平明な旋律線とリズムに置
き換えられて自然な流れとして強調されていることと、そして、曲頭が回想
されることで得られる音楽の把握のし易さを、この作品によって私自身がは
っきりと理解し、受け入れたことによるのである。(2005/09西澤健一ピアノ
作品展プログラム)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Allegro
第2楽章:Adagio
第3楽章:Menuett
第4楽章:Allegretto
第5楽章:主題と変奏 Andante
第6楽章:Allegro molto
委嘱:サンクト・フローリアン三重奏団(三戸素子(Vn)小澤洋介(Vc)Phillip Young(Pno))
初演:2002.12 東京・三戸素子(Vn)、小澤洋介(Vc)、西澤健一(Pno)
大規模でバランスが取れたオーソドックスな音楽であり、各楽章もソナタ、三部形式の緩徐楽章、
メヌエット、フーガ、変奏曲、ロンドと典型的な様式が典型的に揃う。第二番のような直接的な引
用は無いものの、まるで二百年前のヴィーンの音楽家達の霊を召還するかのような暗喩的なフレー
ズは随所に散りばめられている。この作品の何が冒険的で何が野心的なのか。この作品が、実は革
新的な作家の手によってしか書かれ得ない性質のものであることが普く理解されるには、もうしば
らくの時代の流れが必要になることだろう。
結局、独創性を発揮するために捨て去る必要性のあるものなど、くだらぬ固定概念以外には何も無
いし、若くあるために祖先を軽蔑する必要など、どこにも無いのである。(2002/12西澤健一作品
展プログラム)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Prelude : Grave
第2楽章:Fuga
第3楽章:Adagio
第4楽章:Allegro
委嘱:小澤洋介(Vc) 初演:2002.10 八ヶ岳・委嘱者
備考:ヴィオラ用編曲有り
(前略)この混沌とした社会のなかで、日本の一青年が後世への遺産となるような
作品を残すのは並大抵のことではない。西澤はいかにも「現代音楽」といった初期
のスタイルから、この数年で楽譜だけ見ると古典の作品と見紛うようなスタイル
に変貌してきた。変わらないのは、自分の作品を構成する一音一音に対する確信で
ある。また一見保守的な古典的スタイルをとるようになって来ているにも関わらず、
その創作精神は正反対の、より大胆に過激に、勇気を必要とする試みに満ち溢れてき
ている。またその試みのために必要になってくる充分な作曲技法が、彼の根底にある
のは言うまでも無い。(中略)
第1楽章は重厚なソナタ形式のパッサカリア、第2楽章は厳格なフーガ、第
3楽章は美しく穏やかな緩徐楽章、第4楽章は大規模なコーダを持つ舞曲である。
(後略)(記・小澤洋介2003/01)
[楽譜サンプル]
委嘱:新井伴典(Guit) 初演:2002.10 東京・石井孝明(Cl)、委嘱者
新井伴典氏の委嘱で作曲。規模の大きな曲を連続して書いていたので、ま
た委嘱者の希望でもあり、ちょっとしたレクリエーションのつもりで小さな
曲を書こうと思って着手したものの、そのような意味では、やはりあまり成
功していない。曲は純然たる三部形式で、田園風な旋律の息の長い部分と、
ささやかな仕掛けを施した農民舞曲的な部分からなる。ハイドン的な精神を
特に意識して作曲した、と言えば、大まかにこの曲の雰囲気を伝えられるだ
ろうか。無伴奏チェロソナタと初演の日が重なり、「本番」にはいまだ立ち
会っていない。(2006/02)
[楽譜サンプル]