作品目録
簡素な透明性に満ち、エネルギッシュで崇高な内容を持つ西澤の作品は、
まず第一に人間であることに感動する側に立って語り掛ける音楽を味わうという喜びを、
われわれに取り戻してくれる。
〜メキシコ・シナロワ新聞2001年10月27日
習作を除く、今までに作曲した作品の一覧です。
タイトルのリンクをクリックすると作品の詳細がご覧頂けます。
曲の冒頭のみ楽譜もTiff画像にて掲載しておりますのでダウンロードしてご覧下さい。
また、いくつかの作品は
「友の会」ページ
にてMP3を公開しておりますので、ぜひこの機会にご入会ください(入会は無料で、サイト上で行えます)。
2005年
第1楽章:Allegro giocoso
第2楽章:Allegro grazioso
第3楽章:Adagio cantabile
第4楽章:Menuett; Allegretto semplice
第5楽章:Scherzo; Allegro con brio
第6楽章:Rondo; Allegro non troppo ma maestoso
委嘱:現代ギター社
連載:「現代ギター」2005.4月号〜7月号
中級者を対象とした楽曲の連載を、との話を頂いたものの、私自身がギターを全く弾かないのと作家と
しての性格が連載向きのでもないのとで、全くこの仕事には不向きなのではないかと深く内省しては見
たのですが、職業作曲家が一つひとつの作品を構築していく様を演奏家に見て頂くのも意味あることな
のではないかと思い、このたび一年間を有難く頂戴した次第です。まずは第一作として「セレナード第
一番」(全六楽章)を作曲し今月以降4ヶ月間に渡って提供致します。非常に個人的な響きを持ち、た
くさんの仲間にも囲まれるこの楽器には、古典派セレナードの精神が非常に似つかわしく私には思える
のです。(後略)(「現代ギター」2005/04月号)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Moderato
第2楽章:Adagio
第3楽章:Allegro
委嘱:アンサンブル・ブロウ (砂川隆丈、水谷真季(Tp) 藤田乙比古(Hr) 井上康一(Tb) 奥山隆司(Tub))
初演:2005.6東京・委嘱者
アンサンブル・ブロウより委嘱を受け3月に作曲。華やかで力強いソナタ形式の第1楽章、ホルンの独
奏によるエピソードと、カノンとコラールとが交替して進められる第2楽章、諧謔味ある主題とシリア
スな展開とが同居する第三楽章で曲は構成されている。以下は作品の解説として不必要な文言かもしれ
ないが、今回私は不慣れだった金管楽器への楽曲を新たに提供できたことに加え、それ以上に様々な価
値ある新しい発見をし、作曲家としての自分の領域が拡がったのを感じる。この場を借りてこの作品を
書く機械を与えてくださったアンサンブル・ブロウの面々に特に感謝の意を申し上げたい(2005/06ア
ンサンブル・ブロウ演奏会)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Allegro
第2楽章:Adagio cantabile
第3楽章:Menuet
第4楽章:Molto Allegro
委嘱::クライネスコンツェルトハウス(三戸素子、相原千興(Vn) 二宮隆行(Va) 小澤洋介(Vc)
藤田乙比古、萩原顕彰(Hr))
初演:2005.7東京・委嘱者
(前略)その楽譜はスーラの点描画のように西澤とモーツァルトの色が入り交じっていた。
「音楽の冗談」はいってみれば音楽パズルのような作品だが、それを基礎にした西澤作品も
また音楽パズルのような性格を持っている。私達クライネス・コンツェルトハウスのメンバ
ーは、リハーサルを繰り返す過程で、西澤の色のパーツが正しくはまっていくたびにしだい
にモーツァルトの色に染まってゆくという、タイムマシンで行き来しているような独特の臨
場感を味わった。そして「冗談」も「常談」も曲の中に入り込む程その幾重にも仕掛けられた
音楽に驚嘆し、その演奏の可能性が拡がってゆくのに興奮した。(後略)(記・三戸素子200
5/07クライネス・コンツェルトハウス演奏会)
この作品に関しては特別に別の一項を設けたい。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Allegro moderato
第2楽章:Romanze ; Adagio
第3楽章:Menuetto
第4楽章:Andante
第5楽章:Menuetto
第6楽章:Andante - Allegro molto
委嘱:現代ギター社
連載:「現代ギター」2005.8月号〜11月号
今号より連載への第二作として「セレナード第2番」(全6楽章)を掲載します。
シンフォニックな構成と外側へと拡がる精神、大胆で骨太な表現の第1番と比較して、
第2番では、室内楽的な構成と内側へと拡がる精神、そして緻密で繊細な表現を目指し
ています。古典的な音の並びと構成を配していますが、複雑で高度な内容を後生大事
にひけらかすのではなく、それとは感じさせないような筆致と響きにまとめ上げると
いうのも作家の技量です。この作品が観察眼と和声感への良い鍛錬となることを望み
ます。(後略)(「現代ギター」2005/08月号)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Allegro vivace
第2楽章:Menuetto
第3楽章:Andante
第4楽章:Molto Allegro
委嘱:雲井雅人サックス四重奏団(雲井雅人、佐藤渉、林田和之、西尾貴浩)
初演:2005.9東京・委嘱者
前略)われわれ雲カルもリハのたびにこの「サクソフォーン四重奏曲」の中に新しい発見をしてい
るところだ。この作品は、まったき調性音楽であり、堅固な構成を持っている。第3楽章Andanteは、
主題と5つの変奏からなる。(後略)(記・雲井雅人2005/09リサイタル)
雲井雅人サックス四重奏団の委嘱で作曲。「音楽の常談」のもう一つの主題は、
自分からモーツァルトを引き出すことができるかという試みであったが、その次はモーツァルト
から自分を引き出すことが出来るかを試したくなるのが自然の流れである。「セレナード第2番」
とこの四重奏曲は、そのような精神のもとで書かれている。この曲はいずれ弦楽四重奏への布石となろう。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:前奏曲 Andantino
第2楽章:子守唄 Adagio
第3楽章:ユモレスク Allegro leggero
第4楽章:アリア Andante espressivo
第4楽章:カプリッチョ Molto vivace
献呈:金庸太(guit)
様々な事情により「現代ギター」誌の連載は中絶せざるを得なかった。しかし、
連載の有無に関わらず、自分が12ヶ月分の五線紙に一体何を託そうとしたのか、
それが頭にあるうちに書き起こさなければならなかった。この曲は5曲の小品から
なっており、開放弦の音がそれぞれの曲の主音となっている。長調と短調の間を揺
らぎ続ける「前奏曲」(イ長調)、静かな緩徐楽章である「子守唄」(ニ長調)、
諧謔的な「ユモレスク」(ト長調)、もの哀しげな「アリア」(ロ短調)、急速で
快活な「カプリッチョ」(ホ短調)。この作品をもって、しばらくはギター作品か
ら遠ざかろうと思っている。(2006/02)
[楽譜サンプル]
委嘱:石原信輔
久しぶりに石原氏より委嘱。スイスの友人と演奏するということで、丁度手元にあったオネゲルの、
あまり有名ではない歌曲からテーマを取った。アポリネールの詩による原曲はジプシーに恋をしてし
まった男の物語。第1変奏は青年の躍動的な肖像、第2変奏は妖艶な美貌のジプシー女、第3変奏は
二人の情愛を知った近所の知人たち(ほぼ原曲どおり)、第4変奏は消えたジプシー女への思いと二
人の愛を鐘に言いふらされてしまった青年の絶望、そして遠いフランスの鐘の音を聞きながら思いを
馳せるジプシー女…などと思って聴けば、そのようにも聴こえなくもないかも知れない。第4変奏で
はビゼーの有名な旋律も見え隠れする。(2006/02)
[楽譜サンプル]
委嘱:吉田水子(Cb) 石井有子(VN) 佐藤美歌(Pno) 初演:2006.1東京・委嘱者
2005年5月より私は、いわゆる同棲というものをしている。その同居人がタンゴを弾くので、
ほぼ毎日のようにタンゴを聴く生活を送っているのであるが、丁度クリスマスのシーズン。
何かこの時期に使える楽譜は無いかと家捜ししていた同居人の背中を見るに見かねて、それ
ならすぐに用意してあげようと書き始めたのがこの作品だったが、性格ゆえに見る見る我欲
の道にはまり込み、使うのに丁度良いとか、そのようなものからは遠く隔たってしまった。
曲は最初に3つのタンゴ風の変奏に続き、まったくクリスマス騒ぎに賛同していないかのよ
うなアレンジの主題、そして最後は賑やかな終曲で締めくくられる。聴いていただけなのに
随分とタンゴの特徴を心得ていたものだと、作りながら自分で自分に感心した。(2006/02)
[楽譜サンプル]
2006年
第1楽章:ダリア Lento doloroso
第2楽章:いさかい Poco Allegro
第3楽章:祈り Andante religioso. attacca;
第4楽章:春 Andante
原作:横光利一 作詞:岸田洋一
献呈:岸田洋一
習作や公表していないものを除けば初めての歌曲、または歌曲集にあたる。テキストは横光利一の
自伝的な短編小説「春は馬車に乗って」を、岸田洋一氏が詩作品として再編したものを使用してい
る。岸田氏はこの小説から4つのキーワードを導き、それを核に詩を構成した。庭の片隅でダリア
が縮み腐っていくまでの時間経過の中で、病気の妻と看病する夫の間に交わされる会話(「ダリア」)。
妻の苦しみとヒステリーの暴発(「いさかい」)。妻が所望し夫が読み聞かせる聖書の言葉(「祈り」)。
そして、二人の間に春を運ぶスウィトピーの花(「春」)。「祈り」と「春」は続けて演奏される。
原作の最後は、妻は死んだものとして解釈されるのが通常であるが、史実ではこの小説の発表当時、
横光の妻はまだ生きていた。確かにどちらでも受け取れるにも関わらず、しかし演劇的で感動的である。
そんな横光の書き口を私も模倣しようと努めた。…横光は私が深く共感を寄せる小説家である。
今後も機会あれば彼の小説を音楽にすることもあろう。(2006/02)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Sehr langsam
第2楽章:Allegretto
第3楽章:Lebhaft
歌曲の作曲で得た教訓と、クララ・シューマンを個人的に演奏・研究していたことで得た教訓の
お釣りで作曲されたような作品。クララの同名の作品を土台に、多調的な処理でロマン派の精神
を再現するゆったりとした第一楽章、めまぐるしく調性が移り変わる中で飄々と進むユーモラスな第二楽章、
アルペジオのなかでヴァイオリンが「歌うような」第三楽章からなる。この作品を作曲することで僕は時代
の差よりも性別の差を改めて認識してしまった。男の考えることは決定的に理解できないと言う、もしかした
ら女性の演奏家は大変な困難を音楽活動のなかで抱えているのではないだろうか。…簡単に性転換できるなら
いざ知らず、解決しようにも僕は男だからどうすることもできないけれど。(2006/03)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Allemande
第2楽章:Courante
第3楽章:Sarabande
第4楽章:Gavotte
第5楽章:Loure
第6楽章:Gigue
委嘱:武井俊樹(Fg)
ファゴット奏者の武井氏から委嘱を受け作曲。調性的であることと、
二本の楽器の関係が対等であることという条件もあったので最初にカノンのアイデアが浮かんだのだが、
これには先客があったため断念。思いのほか可能性のある編成なので随分と迷ったけれど、
結局はこのように一時期の自分が最も執心して取り掛かっていたバロック様式の組曲として落ち着いた。
だがこの作品ではそれを思い出したに留まらず、それ以降に積んだ経験によって得られた和声に対しても正直であり、
趣味や興味も幾許か変化して、踏襲していると言い切れるのは舞曲のリズムくらいなものである。
ダイナミクスや速度に関する表示の類は音符から全て読み取れると判断して、一切記載していない。(2006/06)
[楽譜サンプル]
第1楽章:Andante, Tempo di Amen - Quasi doppio tempo, Allegro
第2楽章:Adagietto grazioso
第3楽章:Scherzo - Trio ; Meno mosso
第4楽章:Fuga ; Allegro vivace
委嘱、献呈:藤田乙比古(Hr)
本当は、クリスマスにちなんだ曲のアレンジを雑誌の付録用として金管五重奏のために、
ということで引き受けた仕事だったはずなのだが、あまりにも演奏会用にし過ぎてしまったので、
自分の作品として勘定することにした。アーメン終止を展開させた序奏部に、
やはりアーメンから導き出したファンファーレと讃美歌「まきびとひつじを」が交差する第一楽章。
第二楽章は「もろびとこぞりて」を軸に展開し、「あら野のはてに」「ああベツレヘムよ」が交差する緩徐楽章。
第三楽章は「きよしこの夜」のスケルツォに「朝日は昇りて」のトリオ。
第四楽章は「We wish a Merry Christmas」を主唱とし、「ジングルベル」が交差する大規模なフーガとなっている。
(2006/06)
後日談。結局この雑誌の話は、まったく悲劇的というか、喜劇的な理由によって流れてしまった。
だからこの作品が出来上がり、こうしてあるのは、ひとえに藤田氏のおかげなのである。
私は最大限の感謝の気持ちをもって、藤田氏に献辞を送ろうと思う。(2006/11)
[楽譜サンプル]