作品リスト 2019年
出来事 Events
4月:東京・ムジカーザにて「西澤健一~旋律の風景」開催 He held a concert “Kenichi Nishizawa – Landscape of Melody” at Musicasa, Tokyo. (Apr.)
6月:ウィーン・アルテシュミードに出演 He performed at Alte Schmiede, Vienna. (Jun.)
- Land of Heart’s Desire op.106
- Little Sonata for Violin Solo op.107
- Trio for oboe, Bassoon and Piano op.108
- Little Sonata for Percussion instruments and Piano op.109
Land of Heart’s Desire op.106

心願の国
- Andante meditativo
- Andante tranquillo
- Un poco moderato quasi andante
- Andante moderato
原作:原民喜『心願の国』
作曲年月:2019年1月
演奏時間:15分
楽器編成:声楽、ピアノ
初演:2020年11月・東京 豊洲シビックセンターホール/新宮由理(Mez.Sop)西澤健一(Pf)
出版:卍プロジェクト/2023年4月 ISBN 978-4-911078-04-4
ISWC: T-303.602.840-3
Based on ” Land of my Heart’s Desire” by Tamiki Hara
Date: Jan. 2019
Duration: 15 min.
Scoring: Vocal, Piano
First performance: Oct. 2020 at Tokyo, Toyosu Civic Center Hall / Yuri Shingu (Mez.Sop), Kenichi Nishizawa (Pf)
Published by Manji Project, Apr.2023 ISBN 978-4-911078-04-4
曲目解説
病的に無口な彼が、この世界でほぼ唯一会話可能な相手だった最愛の妻・貞恵に先立たれ、一年だけ生き伸びて詩集を書こうと決意した原民喜の頭上に、1945年8月6日、原子爆弾が炸裂した。彼は皮肉にも無傷で、あらゆるこの世の地獄を見ることになる。そうして書かれた『夏の花』は原爆文学の代表作と評価され、書き残すべきことをすべて書き残したところで、彼はひとりの少女と出会う。生き生きと美しい若葉のような彼女との出会いは、新しい季節の到来を彼に告げた。つまり、本来の寿命よりも長いいのちを生きていることを、彼に思い出させたのだった。1951年3月13日、原は中央線西荻窪の線路に横たわる。彼の信じるもっとも激烈な方法で、彼は小鳥になった。自宅には親族や詩友に宛てた17通の遺書と、年少の後輩へ形見にと背広が一着。そして、生涯最後となる小説『心願の国』の原稿が残されていた。
原民喜のテキストによるものとしては2つ目となるこの歌曲集は、『心願の国』から小鳥、星、孤独、春をテーマに文章を抜き出し、テキストとして成型して用いている。これら4つのテーマは各楽章のモチーフにも、たとえば冒頭、ピアノによる小鳥の啼き声の模写などのかたちで反映される。初演は2020年10月23日、豊洲シビックセンターホールにて、メゾ・ソプラノの新宮由理氏と、私自身のピアノによる。
Little Sonata for Violin Solo op.107

無伴奏ヴァイオリンのための小ソナタ
- Moderato con moto
- Andante grazioso
- Vivace
- Allegretto
作曲年月:2019年5月
演奏時間:10分
楽器編成:ヴァイオリン
委嘱:荒井章乃(Vn)
初演:2019年7月・横浜 鶴見区民文化センターサルビアホール音楽ホール/荒井章乃(Vn)
出版:卍プロジェクト/2023年4月 ISBN 978-4-911078-01-3
ISWC: T-303.602.847-0
Date: Jul. 2019
Duration: 10 min.
Scoring: Violin
First performance: Jul. 2019 at Yokohama, Tsurumi Citizens Cultual Center Salvia Hall – Music Hall/ Ayano Arai (Vn)
Published by Manji Project, Apr.2023 ISBN 978-4-911078-01-3
曲目解説
ヴァイオリンが一挺あれば大伽藍さえも建立できる…。無伴奏ヴァイオリンのために作品を書くとき、バッハの遺した偉業を意識しない作曲家はいないだろう。一本の線で重層的な音楽の構造を実現する対位法の魔術。その魔術を自分たちなりの方法で探求したイザイ、バルトークによる骨太なレパートリー群も貴重だ。無伴奏は(奏者にとってもそうに違いないが)作曲家にとって大変難しいジャンルである。ごまかしの利かない墨絵を描くような心持ちがする。ゆえに、楽器の響きと先達の知恵とに耳を傾けながら、自分の内側を豊かに拡げていく大切な機会となり得る。2015年以降、リコーダーや打楽器など、レパートリーの少ないだろう編成のために「小ソナタ」と名のつく一連の作品群を書いており、これはその3作目にあたる。古典に範を求めた形式に、両端楽章は和声で、中間楽章はリズムで遊んだ。荒井章乃氏の委嘱で2019年5月に作曲。
Trio for oboe, Bassoon and Piano op.108

オーボエ、ファゴットとピアノのための三重奏曲
- Allegro moderato
- Allegretto
- Andantino – Allegro
作曲年月:2019年9月
演奏時間:16分
楽器編成:オーボエ、ファゴット、ピアノ
委嘱:日本ダブルリード株式会社
ISWC: T-303.602.854-9
Date: Sep. 2019
Duration: 16 min.
Scoring: Oboe, Bassoon, Piano
Commissioned by Japan Double-reed Ltd.
Little Sonata for Percussion instruments and Piano op.109

打楽器とピアノのための小ソナタ
- Tempo di marcia
- Andante
- Scherzo
- Tempo di marcia
作曲年月:2019年10月
演奏時間:10分
楽器編成:打楽器(2ティンパニ、2トムトム、タンバリン、ヴィブラフォン、2シンバル(サスペンダー、チャイナ)、タムタム、シロフォン、2ウッドブロック、ヴィブラスラップ、スネア・ドラム、ホイッスル)ピアノ
委嘱:新野将之
初演:2023年4月・東京 めぐろパーシモンホール小ホール/新野将之(Perc)西澤健一(Pf)
出版:卍プロジェクト/2023年4月 ISBN 978-4-911078-00-6
ISWC: T-303.602.859-4
Date: Oct. 2019
Duration: 10 min.
Scoring: Percussions (2 Timp. 2 Tom-t. Tamb. Vib. 2 Cymb. (Suspended, China) Tam-t. Xylo. 2Woodblocks. Vibraslap. S.D. Whistle) Piano
Commissioned by Masayuki Nino
First Performance: Apr. 2023 at Tokyo, Meguro Persimmon Hall – Small Hall / Masayuki Nino (Perc) Kenichi Nishizawa (Pf)
Published by Manji Project, Appr.2023 ISBN 978-4-911078-00-6
曲目解説
「小ソナタ」シリーズの4作目である本作は、2019年、新野将之氏の委嘱で作曲された。第1楽章にはティンパニ、第2楽章にはヴィブラフォン、第3楽章にはシロフォンを配する構成は、ジョリヴェ『打楽器協奏曲』のオマージュとなるような作品を切望していた新野氏のアイデアに依る。加えて、それらに添える楽器も楽章ごとに皮革、金属、木材と材質を揃えた。第4楽章は一転して、スネアドラム一本の行進曲。スネアドラムの作品だけでCDをリリースしたこともある、氏の十八番の楽器で締めくくるという趣向である。